[bisen-OB ガンちゃんのアート探訪]90周年記念 道展
bisen-OB会会員「ガンちゃん」による不定期コラムコーナーです。

「ガンちゃん」
猪股岩生 ~ グラフィック専攻の9期卒業生。画家/造形デザイナー。
屋外造形物、建築、景観の造形プランナーをはじめ、ホームページ制作、CI構築代行と幅広く活動。また、北海道の自然をテーマにした風景画を描き続けている。
絵画工房gan-gan 代表。
道展(北海道美術協会展)の90周年記念展を札幌市民ギャラリーにて鑑賞させていただきました。
道展は北海道で最も歴史のある美術団体である。大正14年(1938年)に札幌市の中島公園にあった農業館にて第1回展が開催され、今年で90周年を迎える。
永い歴史の中で北海道の美術界発展に果たした役割は計り知れない。
bisen関係の出品者の作品も展示されているのでご紹介させていただく(ご紹介できていない方がおられましたらごめんなさい)。
いつもながら、この記事は評論ではなく、思いつくままの一個人の感想録です。
受付を通るとすぐに90周年記念大賞を受賞された佐藤歩惟さん(道教育大学の大学院生)の工芸「spring stove]」が展示されている。
室蘭に住んでいた小学生の頃、ちょっと形状は違うがコークス(石炭を蒸し焼きにして造る雷おこしの様な燃料)や豆炭 (石炭に消臭剤を加えてそろばんのコマの様な形に固めた燃料。石炭は燃やすと独特の臭いがある)を燃料にしたストーブがあって、正月には熱くなった表面に切り餅をゆっくり擦り付けて焼くと、かんなくずの様に餅が伸びて、それをおやつ代わりに食べた事を思い出す。 石炭ストーブは多くの50歳以上の世代の人にとって、子供の頃の原風景ではと思ったりもする。 では道展が始まった昭和初期の北海道はどんな姿だったのだろうか? その当時新天地を求めて内地(本州)から移住して間もない人々も多く、札幌の人口も20万人をちょっと超える位だった事を考えると、美術団体を立ち上げた事自体、並大抵の苦労ではなかったのではと容易に想像出来る。
まるで真剣に絵画作品を鑑賞しているかの様な彫刻作品。
一瞬 スノーボードが立て掛けられている様に見えた立体的な作品。
今回は日本画、油彩、水彩、版画、彫刻、工芸の6部門に会員、会友と一般出品作品を合わせ577点が展示され、ボリュームもあり楽しめた。
(道展には写真部門はない。道内の美術展では道彩展の様に絵画と併せて写真部門が充実している公募展もある。部門分けはそれぞれの公募展により異なる。例えば今年第100回記念を迎えた二科展は絵画部、彫刻部、デザイン部、写真部の4部門になっている。)
かなり以前になるが野付半島に行った時の景色を思い出す。
緑溢れる風景も好きだが枯れた風景は趣がある。
諸行無常・・・・朽ち果てた遊園地や工場などの産業遺産などを巡るツアーが人気だが日本人が特に敏感に感じる仏教哲学に通じる美意識を刺激する何かがあるのかも知れない。最近長崎の軍艦島が世界遺産登録で話題になったが、映像を観る度に哀愁とも感動ともつかない何とも言えない感情が沸き上がってくる。
bisen1期生の日本画家・千葉晃世さんの作品。
白地の正方形で構成された作品は以前も拝見した事があったが、その一つ一つの枠に描かれた樹木の線質が味わい深く印象に残っている。
実際の南京錠が幾つも使われている立体的平面(?)作品(中央)。
平面上の作品に筆で描かず様々な素材を貼付ける手法は彫刻と絵画の境目を取り払ったコラージュの手法とも言える。ドイツの画家マックス・エルンストを思い出す。
月見障子からネコが身を乗り出してこちらを見ている様がかわいらしい作品(中央)。
和の空間はやはり不思議な安心感がある。
工芸の展示も造形的に見応えがある作品が多い。巷では直線が主体のデザインが多いが、有機的な曲線を使った作品群はプリミティブな手感覚が心地よい。
亀甲文様の透かし彫りの技法で作られた壷。文様の美しさと鈍く光る黒光りした質感に重厚感を感じた作品。
動物との触れ合いは心が和む。子供の頃柴犬を飼っていてよく田舎の山道を散歩した。夏には目的地の砂防ダムの近くでリードをはずしてあげると、一目散に小さなダムに溜まったプールに飛び込み、気持ち良さそうに泳ぐ姿が思い出される。
アメリカで一時期盛んに行われたビルの壁面に大きく絵画やデザインを描く「スーパーグラフィック」を彷彿させる作品。ダイレクトな表現に迫力を感じる。
対象物をストレート素直に描く・・・それがある種の爽快感を呼ぶ。
木材で丁寧に創られたヒツジ。その表情とフォルムが木材の質感と相まって作品に暖かみを与えている。
いつもOB展に出品頂いている野沢桐子さん(31期)の作品(中央)。いつもながら安定感のある写実の落ち着いた 作風が魅力。
今度新会友になられたbisen職員の寺島寛之さんの作品(中央)。
若い女性をモチーフにした作品が多いが今回も丁寧なタッチで描かれた優しい女性像が印象的。
北海道は素晴らしい広大な大地と自然がある。それは少なからず北海道のアーティストに多大な影響を与えている筈である。
広々とした風景は作品に伸びやかさと大らかさを与える。
後10年で100周年を迎える道展でこれからどんな作品に巡り会えるか楽しみな展覧会でした。

「ガンちゃん」
猪股岩生 ~ グラフィック専攻の9期卒業生。画家/造形デザイナー。
屋外造形物、建築、景観の造形プランナーをはじめ、ホームページ制作、CI構築代行と幅広く活動。また、北海道の自然をテーマにした風景画を描き続けている。
絵画工房gan-gan 代表。
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90周年記念 道展
会場:札幌市民ギャラリー(札幌市中央区南2条東6丁目)
会期:2015年10月14日(水)~11月1日(日)
会期:2015年10月14日(水)~11月1日(日)
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道展(北海道美術協会展)の90周年記念展を札幌市民ギャラリーにて鑑賞させていただきました。
道展は北海道で最も歴史のある美術団体である。大正14年(1938年)に札幌市の中島公園にあった農業館にて第1回展が開催され、今年で90周年を迎える。
永い歴史の中で北海道の美術界発展に果たした役割は計り知れない。
bisen関係の出品者の作品も展示されているのでご紹介させていただく(ご紹介できていない方がおられましたらごめんなさい)。
いつもながら、この記事は評論ではなく、思いつくままの一個人の感想録です。
受付を通るとすぐに90周年記念大賞を受賞された佐藤歩惟さん(道教育大学の大学院生)の工芸「spring stove]」が展示されている。
室蘭に住んでいた小学生の頃、ちょっと形状は違うがコークス(石炭を蒸し焼きにして造る雷おこしの様な燃料)や豆炭 (石炭に消臭剤を加えてそろばんのコマの様な形に固めた燃料。石炭は燃やすと独特の臭いがある)を燃料にしたストーブがあって、正月には熱くなった表面に切り餅をゆっくり擦り付けて焼くと、かんなくずの様に餅が伸びて、それをおやつ代わりに食べた事を思い出す。 石炭ストーブは多くの50歳以上の世代の人にとって、子供の頃の原風景ではと思ったりもする。 では道展が始まった昭和初期の北海道はどんな姿だったのだろうか? その当時新天地を求めて内地(本州)から移住して間もない人々も多く、札幌の人口も20万人をちょっと超える位だった事を考えると、美術団体を立ち上げた事自体、並大抵の苦労ではなかったのではと容易に想像出来る。
まるで真剣に絵画作品を鑑賞しているかの様な彫刻作品。
一瞬 スノーボードが立て掛けられている様に見えた立体的な作品。
今回は日本画、油彩、水彩、版画、彫刻、工芸の6部門に会員、会友と一般出品作品を合わせ577点が展示され、ボリュームもあり楽しめた。
(道展には写真部門はない。道内の美術展では道彩展の様に絵画と併せて写真部門が充実している公募展もある。部門分けはそれぞれの公募展により異なる。例えば今年第100回記念を迎えた二科展は絵画部、彫刻部、デザイン部、写真部の4部門になっている。)
かなり以前になるが野付半島に行った時の景色を思い出す。
緑溢れる風景も好きだが枯れた風景は趣がある。
諸行無常・・・・朽ち果てた遊園地や工場などの産業遺産などを巡るツアーが人気だが日本人が特に敏感に感じる仏教哲学に通じる美意識を刺激する何かがあるのかも知れない。最近長崎の軍艦島が世界遺産登録で話題になったが、映像を観る度に哀愁とも感動ともつかない何とも言えない感情が沸き上がってくる。
bisen1期生の日本画家・千葉晃世さんの作品。
白地の正方形で構成された作品は以前も拝見した事があったが、その一つ一つの枠に描かれた樹木の線質が味わい深く印象に残っている。
実際の南京錠が幾つも使われている立体的平面(?)作品(中央)。
平面上の作品に筆で描かず様々な素材を貼付ける手法は彫刻と絵画の境目を取り払ったコラージュの手法とも言える。ドイツの画家マックス・エルンストを思い出す。
月見障子からネコが身を乗り出してこちらを見ている様がかわいらしい作品(中央)。
和の空間はやはり不思議な安心感がある。
工芸の展示も造形的に見応えがある作品が多い。巷では直線が主体のデザインが多いが、有機的な曲線を使った作品群はプリミティブな手感覚が心地よい。
亀甲文様の透かし彫りの技法で作られた壷。文様の美しさと鈍く光る黒光りした質感に重厚感を感じた作品。
動物との触れ合いは心が和む。子供の頃柴犬を飼っていてよく田舎の山道を散歩した。夏には目的地の砂防ダムの近くでリードをはずしてあげると、一目散に小さなダムに溜まったプールに飛び込み、気持ち良さそうに泳ぐ姿が思い出される。
アメリカで一時期盛んに行われたビルの壁面に大きく絵画やデザインを描く「スーパーグラフィック」を彷彿させる作品。ダイレクトな表現に迫力を感じる。
対象物をストレート素直に描く・・・それがある種の爽快感を呼ぶ。
木材で丁寧に創られたヒツジ。その表情とフォルムが木材の質感と相まって作品に暖かみを与えている。
いつもOB展に出品頂いている野沢桐子さん(31期)の作品(中央)。いつもながら安定感のある写実の落ち着いた 作風が魅力。
今度新会友になられたbisen職員の寺島寛之さんの作品(中央)。
若い女性をモチーフにした作品が多いが今回も丁寧なタッチで描かれた優しい女性像が印象的。
北海道は素晴らしい広大な大地と自然がある。それは少なからず北海道のアーティストに多大な影響を与えている筈である。
広々とした風景は作品に伸びやかさと大らかさを与える。
後10年で100周年を迎える道展でこれからどんな作品に巡り会えるか楽しみな展覧会でした。
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ガンちゃん こと 猪股岩生