箱庭風イラストはどう描く?人物と物から小さな世界を作る5ステップ

人物を描いたあと、背景をどうするかで手が止まることがあります。場所の雰囲気も加えたいけれど、画面いっぱいに建物や風景を描くとなると、考えることが一気に増えるんですよね。

そこで気になったのが、小さな土台の上に人物や物をまとめる「箱庭風イラスト」です。場面の一部を切り取ったような形なら、何を描き、どこまで描くかを絞れます。

今回考えた進め方は、①人物と大きな物を決める、②土台と配置を作る、③奥行きとシルエットを整える、④色と塗り方を決める、⑤清書して全体を確認する、の5ステップです。

題材には、以前描いた着物姿の青年を生かしたいと思っています。そこへベンチを組み合わせ、まずは小さな一場面から考えてみます。

目次

箱庭風イラストは、描く範囲を自分で区切れる

人物や風景の一部を、小さなジオラマのようにまとめたイラストは「ヴィネットイラスト」とも呼ばれます。今回はその中でも、人物と周囲の物を小さな土台の上に配置する、箱庭風の表現を考えます。

例えば、人物とベンチ、その足元の地面だけを描く。周囲の街並みまで埋めなくても、その人がどんな場所にいるのかを表現できます。

私が惹かれたのは、小さな土台の縁を、その場面の区切りとして見せられるところでした。

普通のイラストでも描く範囲は選べますが、箱庭風なら、人物とベンチ、その足元の地面を土台の上にまとめられます。地面が土台の縁で終わっていても、小さなジオラマとして見せる形なので、周囲の街並みまで描き続けずに一場面を表現できます。

私には、背景をどこまで描くか迷う前に、「この土台に収まるものを描く」と決められることが、取り組みやすそうに感じられました。

左は地面や道が画面の外へ続く構図、右は人物とベンチを小さな土台にまとめた箱庭風の構図です。
右では、土台の縁を場面の区切りとして見せています。同じ題材で描く範囲の違いを示した説明用サンプルです。

以前の「Pastelaで着物姿の青年を描いてみた!迷う時間を減らす3つの工夫と難しかったこと」では、背景を省き、青年の上半身に絞って描きました。

以前、Pastelaで描いた着物姿の青年です。今回はこの人物をもとに、ベンチのそばで一息ついている場面を考えます。

今回は、この青年にベンチと足元の地面を組み合わせる制作案です。元の絵は上半身だけなので、箱庭の中に収まる全身の姿勢や、ベンチとの位置関係を新たに考えます。以降の比較画像は、配置や描き方を説明するためのサンプルです。

小さな背景でも、物の向きや重なりは必要です。ただ、最初から街全体を考えるより、人物と一つの物に絞った方が、位置関係を確かめながら進められそうです。

ステップ① 人物と大きな物を決める

最初に、誰が、どこで、何をしている場面なのかを決めます。

キャラクターの好きなものから場所を考えても、描きたい物から人物の動作を考えても構いません。ベンチなら休憩中、バイクなら出発前など、物と動作を組み合わせると場面を絞れます。

今回は、以前描いた着物姿の青年を、背景のある場面へ広げてみたいと思い、人物の題材に選びました。新しいキャラクターを考えるより、すでに描いた髪や着物の特徴を生かしながら、全身の姿勢と周囲の配置に取り組みたいからです。

組み合わせる物はベンチにしました。人物との大きさを比べやすく、「そばに立つ」「腰掛ける」といった姿勢から、休憩中の場面を考えられるためです。 また、座面や背もたれを大まかな箱の形に置き換えれば、細部を描く前に配置を試せます。

まずはこの二つで「一息ついている場面」が伝わるかを確かめ、必要なら小物を加える案にしました。

初めに置く物は、人物に対してある程度の大きさがあるものを選びます。ベンチ、ポスト、バイク、車などなら、人物との大きさを比べながら配置できます。

逆に、小さな鉢植えやコップから増やしていくと、場面全体の大きさが決まらないまま、細部へ進んでしまいそうです。

まずは人物と大きな物。この二つで場面が伝わるかを見てから、小物を加えます。

ステップ② 土台と配置を作る

人物と組み合わせる物を決めたら、それらを置く土台を描きます。 最初は単純な図形で、大きさと位置を決めます。

下の比較画像では、配置を決める段階と、形を描き起こす段階を示しています。左では人物やベンチを単純な図形に置き換え、細部を描かずに位置関係を確認しています。

左は人物とベンチを単純な図形で配置したもの、右はその位置をもとに人物とベンチの形を描いたものです。
人物とベンチが土台のどこに乗っているかを比べています。

いきなりベンチの脚や背もたれを描くのではなく、最初は箱として置きます。人物も頭と胴体の大まかな形で十分です。

土台は四角い地面だけでなく、丸や三角、厚みのある立方体などでも作れます。開いた本を土台にすれば、ページの上に小さな世界があるような見せ方もできます。

今回は配置を考えやすいよう、四角い地面から始める案にしました。

土台には薄いガイド線を引きます。人物の足元やベンチの脚が接する位置を確かめ、同じ地面に乗って見えるかを確認するためです。

配置では、人物とベンチの大きさの違いに加えて、二つの関係が伝わるかを確認します。

例えば、青年がベンチのそばに立っている姿なら、「歩いてきて、これから休憩するところ」にも見えます。一方、腰掛けて肩の力を抜いた姿なら、「足を休めて一息ついているところ」を表しやすくなります。

今回の制作案では、休憩中だと伝わることを優先し、ベンチに座る姿勢を試したいです。 腰が座面に乗り、足が地面に着く位置を大まかな形で確かめてから、着物の裾や袖を描くつもりです。

小さな鉢植えなどを加えるのは、そのあとで考えます。まずは人物とベンチだけで、どんな場面に見えるかを確かめたいです。

ステップ③ 奥行きとシルエットを整える

配置ができたら、奥へ続く方向と、絵全体の外形を確認します。

まず奥行きです。ベンチを真正面に置くか、少し斜めに置くかで、見える面が変わります。

左は正面向き、右は斜め向きのベンチです。右では側面や脚の前後関係が見えやすくなります。
座面は左でも見えていますが、向きを変えると、見える面の形が変わることを確認できます。

斜めに置けば、側面や奥へ続く方向を示せます。土台にも同じ方向のガイド線を引き、ベンチだけが違う向きに見えていないかを比べます。

ただ、奥行きが強いほどよいとは考えていません。正面に近い配置は、形が分かりやすく、平面的で親しみやすい雰囲気にもできます。

今回の制作案では、小さな土台の上に人物とベンチが並ぶ立体感を見せたいので、少し斜めから見る構図にします。 ベンチの正面だけでなく側面も見せることで、座面の奥行きや人物との前後関係を確認しやすくなるためです。ステップ④の色の比較画像も、この斜めの構図で示しています。

次に、人物とベンチが重なって、腕や背もたれの形を見分けにくくなっていないかを確認するため、ラフを一色で塗りつぶします。色や模様を隠し、外側の形である「シルエット」と、その間に残る隙間を見ることで、配置を直す必要がある場所を探します。

左は人物とベンチの形が重なった配置、右は少し離した配置です。
右では腕と体の間、人物とベンチの間に隙間ができ、それぞれの形を読み取りやすくしています。

色や模様があると見分けられても、一色にすると形がつながって見えることがあります。

今回なら、人物の腕とベンチの背もたれが重なっていないかを確認したいです。分かりにくければ、人物の位置を少しずらしたり、腕の向きを変えたりして比べます。

無理に小物を増やさなくても、今あるものの配置を変えるだけで、形を読み取りやすくできるかもしれません。

着物の模様やベンチの木目まで描いたあとで、人物の位置を動かすことになったら大変ですよね。だからこそ、細部を描く前にシルエットを確かめておきたいと思います。

ステップ④ 色と塗り方を決める

形が決まったら、細かく塗る前に、大まかな色を置きます。

この段階の色付きの下描きが「カラーラフ」です。服の模様や木目まで描かず、人物・ベンチ・地面がどう見分けられるかを確認します。

左は大まかな基本色を置いた状態、右は同じ配色をもとに明暗を加えた説明用サンプルです。
右のオレンジ色の丸で示した、着物の襟の重なりと、ベンチ下の地面に落ちる影を比べてください。

左では、着物の緑、ベンチの茶色、地面のベージュで、画面全体の組み合わせを見ます。この段階なら、「着物とベンチの色が近すぎる」「地面が目立ちすぎる」と感じても、大きな範囲で調整できます。

例えば、人物が背景になじみすぎているなら、着物の色を変える前に、ベンチや地面の明るさを調整する方法もあります。人物だけを目立たせようとするのではなく、周囲との色の差を見ながら決めたいところです。

右では、襟の重なりや服の折れ目に暗い色を加え、布が重なる部分や折れ曲がる形を表しています。ベンチの下の地面にも影を置き、ベンチが地面の上に立っている様子を示しています。

この比較画像では、青年がベンチの前に立ち、背もたれに手を添える関係を見せるため、人物とベンチが一部重なる構図にしています。 完全に離して並べるより、青年がベンチのそばで過ごしている場面を表しやすいと考えました。

シルエットの確認でも、重なりをすべてなくす必要はありません。今回なら、ベンチの一部が人物に隠れていても、人物の姿勢とベンチの形を読み取れるかが確認点です。色を置いた後は、緑の着物と茶色のベンチが、重なる部分でも見分けられるかを確かめます。

色を次々に増やすより、決めた基本色に対して、どこを明るくし、どこを暗くするかを考える進め方です。

以前の青年の制作でも、基本色を決めてから髪や着物に明暗を加えました。今回は、その考え方を人物だけでなく、ベンチや地面にも広げたいと思っています。

塗り方は、作りたい雰囲気に合わせます。柔らかく親しみやすい場面なら、影の段階を絞る。素材の重さや場面の緊張感を出したいなら、明暗や筆跡を増やす方法もあります。

厚塗りは、色を重ねながら形や陰影を描いていく塗り方です。ただ、最初から描き込むと、あとで配置を変える際の手戻りも大きくなります。

まずカラーラフで人物・ベンチ・地面の色の組み合わせを確かめてから、どこまで塗り込むかを決めます。人物だけを細かく仕上げすぎないよう、周囲との明暗や描き込みの程度も比べたいです。

ステップ⑤ 清書して全体を確認する

清書では、ラフで決めた形を整え、主役から順に必要な描写を加えます。

今回なら人物を先に進め、その後ベンチや地面を仕上げる順番です。ただ、顔だけを完成させて周囲を後回しにしすぎないよう、区切りごとに画面全体へ戻ります。

レイヤーは、人物・ベンチ・地面など、あとから動かしたり直したりする単位で分けます。細かく分けることより、修正したい場所を選べる状態を残したいです。

途中でレイヤーをまとめる場合も、配置を変える可能性がある段階では、統合前のデータを残しておきます。

仕上げでは、次の点を確認します。

  • 人物とベンチが、同じ土台に乗って見えるか
  • 腕や脚、背もたれの形が重なって分かりにくくなっていないか
  • 小さく表示しても、人物が主役として見えるか
  • 小物を減らした方が、場面が伝わる場所はないか

完成前になると、何か足したくなりそうです。でも、空いている場所がすべて不足とは限りません。

人物とベンチだけで場面が伝わるなら、空いている場所を無理に埋める必要はありません。細部を増やす前に、最初に描こうとした一場面になっているかを確かめます。

まとめ

  • ①人物と大きな物を決める:誰が、どこで、何をしているかを絞る
  • ②土台と配置を作る:単純な図形で位置と大小を決める
  • ③奥行きとシルエットを整える:物の向きと、形を読み取れる隙間の確認
  • ④色と塗り方を決める:カラーラフで配色を決め、必要な明暗を追加
  • ⑤清書して全体を確認する:主役と配置を見ながら細部を調整

今回の制作案では、着物姿の青年とベンチだけで「そこで一息ついている場面」が伝わるかを、まず確かめたいと思っています。

背景を広く描こうとすると、建物や植物まで考えたくなります。でも、箱庭風なら描く範囲を自分で決められるところが魅力です。

まだ完成した作品ではありませんが、以前描いた青年を生かしながら、小さな一場面を形にするところから始めてみたいです。

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